季節を楽しむお菓子② 柚子釜薯蕷饅頭
今月から11月、お茶の世界ではお正月ともいわれる時期。
炉の季節が始まりました。
昔は初夏に収穫したお茶を茶壷につめて保管し、夏を越して涼しくなったちょうどこの時期に、茶壷の封を切ります。
寒い時期には寒い時期の、暑いときは暑いなりのお点前やしつらえがあり、それを楽しめるのが、お茶をしていてもっとも楽しいことです。
先日記事(*)にも上げた水円舎のインスタグラム(@suiensha)に、すだち釜の薯蕷饅頭がアップされていました。
こんな素敵なお菓子があるのね~!と思っていたら、お稽古の時に先生からも、みかん釜の薯蕷饅頭を先日屋外の茶会でいただいた、というタイムリーなお話が。
ちょうど生徒さんで畑をやっている方がいて、家の柚子が今年は豊作だということで、なんと柚子釜の薯蕷饅頭を作って下さり、一緒にいただくことができました。
作り方は、まず柚子の中身をくりぬいて、水につけたりお湯で煮たりして柚子皮の苦みを抜いて、薯蕷饅頭をつめて蒸し器で蒸します。
薯蕷饅頭だと蒸したときにしっとりするそうです。
蒸し時間は10分~20分くらいですが、意外と柚子が柔らかくなり黒文字でも無理なく皮ごと切れます。
試作品も食べ比べましたが、少し小ぶりな柚子だと皮も薄くてやわらかくて良さそうです。
いただいてみると、餡の甘さと柚子の苦みがものすごく合う!
そしてそのあとにいただくお抹茶が、苦みと甘みを流してくれて、口の中には柚子の香りが残ります。
蒸したては温かくみずみずしくて、なんとも贅沢~、なお菓子です。
(お酒にもよく合います!)
茶の湯では秋から冬の夜長を楽しむ「夜咄(よばなし)」という茶事があるのですが、その時にいただいたりするのだと先生が仰っていました。
夜咄(よばなし)は薄暗いろうそくの明かりの中で行われるので、基本的に花は飾りません。そんな中でこのお菓子をいただいたら、柚子の香りで癒されるだろうなあ。
お茶をしていると、足るを知るというか、全てが便利で快適でなくてもいいんだなあ、と思うことがあります。
手間をかけることの楽しさというか。。。面白いですね。
いつか夜咄の茶事にも参加してみたいです。