鮎のシーズン到来。和食での魚の盛り付け知っていますか?和菓子の鮎の向きは?
初夏の風物詩のひとつでもある鮎。
料理屋さんに鮎がお目見えするのは5月頃からですが、だいたい5月下旬〜6月が友釣りの解禁日となる所が多いようです。
渓谷や清流など、水が綺麗なところで生息する鮎。
丸ごと塩焼きにして、骨まで食べるのは最高の贅沢ですね。
魚を盛り付ける時、頭の向きはどっち?
鮎の話の前に、日本料理の基本のひとつを紹介したいと思います。
焼き魚を盛り付ける時は、
海の魚も川の魚も左に頭が来るようにします。
なぜかというと日本には古くから、左が優位・上位という思想があります。
それに倣って、日本料理でも魚の頭は左という決まりがあるそうです。
後は単純に日本は右利き文化なので、左手で頭を抑えて右手で身をほぐして食べるのが食べやすい、ということもあるようです。
「海腹川背」とは?
日本料理の決まりを表す言葉に「海腹川背(うみはらかわせ)」というものがあります。
この言葉には2つの意味があり、ひとつは
「切り身の魚を焼く時に、海魚は腹側(身)から焼き、川魚は皮目から焼く」
というもの。
海魚は身が割れやすいのでそちらから先に焼いて身崩れを防ぎ、川魚は皮から焼くことで独特の臭みが身から抜けやすいのだそうです。
(ただ現場ではこの限りではないという話も聞いたことがあります。
海川関係なく、盛り付けた時に上に来る側から焼くことも多いようです。)
「海腹川背」のもうひとつの意味は、盛り付け方。
海魚は腹が手前、川魚は背が手前に来るように盛りつけます。
ただ、背が手前で腹が向こう側だと、魚がひっくり返って死んでしまったような感じで違和感がありますよね。
(もちろん実際食べる時には死んでるんですけど。。。)
なので、川魚は立てて背を上に向けて盛ることが多いそうです。
または「見た感じにしっくり来るように」腹を手前に盛り付けることもあるようです。
注意したいのは、「左が頭」が最優先であること!
右を頭にすると縁起が悪いということになります。
(お葬式や法事などで敢えてそのように盛る場合もあります。)
和菓子の鮎の向きは逆?
和菓子屋さんに鮎菓子が出てくると、初夏だなあと感じます。
鮎菓子と言って馴染みが深いのは、細長く焼いた生地(調布)を二つ折りにして中に求肥やあんを包んだものだと思います。
生地を手前に折りたたむことによって少し背中側に高さが出るので、より自然な感じに見えますね。
わたしも先日お稽古の時に鮎をいただきましたが、菓子器の上の鮎は、頭が左で腹を手前にして盛られていました。
なんとなく鮎を裏返してみると、裏側には焼き印が入っていません。
つまり、頭を左で腹が手前、というのが和菓子の鮎は正しいのですね。
・・・と思いきや。
あれ?そんなこともない・・・?
なぜか金谷正廣さんの香魚は右向きで箱に入っています。
(これ、とてもリアルですが和菓子なのです。)
考えた結果、この鮎は和菓子で、茶席で頂くことを想定して作られているはず。
わたしはこのお菓子を食べたことはないですが、もし茶席で出てきたら、右手で串を抜いて、菓子切りで切って食べますよね。
菓子の右側から切って食べることになりますから、鮎を頭から頂くことができます。
(それなら調布の鮎もそうじゃないか、と言われると困ってしまいますが。。^^;)
落雁や焼き菓子の鮎は、裏表がなくてどちらの面でも使えそうな感じ。
うーん、割と自由なのかもしれません。
ルールがどう、というよりも、お客様に「食べる時間を楽しんでもらえるか」を考えて作られているのかもしれませんね。
梅園さんの鮎もかなりリアル!
この姿を見たら口は塩気を迎える体勢になってしまうでしょうから、戸惑いそうですね^^;