抹茶,  茶道

抹茶や煎茶の品質を高め保つ製法「合組」。宇治茶の定義とは?

 

茶の湯に不可欠なものといえば茶道具やお菓子、花などもそうですが、まず何よりも抹茶がなければ始まりません。

 

 

この「抹茶」、ワインのようにその年の収穫によって品薄になったり製品の味が変わったりする、ということがありません。

 

お茶も葡萄も自然の収穫物なのに、不思議だと思いませんか?

 

これには「合組(ごうぐみ)」という製法が係わっているのですが、実はこの「合組」が、「抹茶といえば宇治抹茶」のイメージにも繋がっているのです。

 

合組とはブレンドのこと

 

合組というのは製茶用語で、ものすごく簡単に言うと色んな抹茶(碾茶)をブレンドすることです。

 

お茶ではないですが、2018年に北海道のブレンド米「合組」も話題になったので言葉は知っているという方も多いかもしれませんね。

 

マツコさんが持つとお茶碗が小さくてかわいいです^^

 

 

お茶の話に戻りますが、例えば家元の好みの茶銘がついた抹茶が「今年は出来が悪くて少量しか販売出来ません」なんてことがあっては困りますよね。

 

でも茶の木は作物なのでもちろん、毎年出来が違います。

お茶屋さんで煎茶の新茶などを見てみると、その年の出来栄えがちがうのがわかると思います。

 

では品質を高く保ち安定して流通させるために、何をしているか?

 

答えは「合組」です。

 

「ブレンド」というと、粗悪なものを混ぜるようなマイナスのイメージを持つ方もいるかもしれませんが、「合組」は、その茶葉の特徴をとらえ、味や香りのバランスを見ながら数種類の茶葉を組み合わせていく、とても繊細な専門技術です。

 

合組は「拝見場」という専用の場所で五感を研ぎ澄ませて行います。

(写真:上林春松本店より)

 

 

 

 

宇治茶の定義とは?

さて抹茶といえば、京都宇治の抹茶が最高と言われ知名度も高いですが、実は宇治茶というのは「宇治の茶園で育ったお茶」という意味ではありません。

 

公益社団法人 京都府茶業会議所が、2004年に宇治茶を商標登録して宇治茶の定義を決めました。

「宇治茶は、歴史・文化・地理・気象等総合的な見地に鑑み、宇治茶として、ともに発展してきた当該産地である京都・奈良・滋賀・三重の四府県産茶で、京都府内業者が府内で仕上加工したものである。
 ただし、京都府産を優先するものとする。」

 

つまり宇治茶というのは産地を表すのではなく、
「京都近隣のお茶を、宇治地域に伝わる製法により京都で仕上げ加工したお茶」
のことを指します。

 

考えてみれば県境が決まるずっと前からお茶は栽培されているので、県境が決まったから茶畑をきっちり分けて名前も変えよう、という方が無理がありますよね。

 

宇治地域に伝わる伝統的な製茶の技術の高さが、宇治茶を名乗れる証になるわけですね。

 

 

宇治以外に抹茶はないの?

 

そうなると気になるのが、宇治地域以外のお茶処の抹茶の存在。

 

日本三代茶処と言われる静岡茶や狭山茶の抹茶って、あまりピンとこないかもしれません。

静岡茶や狭山茶のお茶屋さんのサイトを覗いてみると、驚いたことに煎茶は地元産のものを売っていても、いわゆる茶道で使う「お抹茶」は京都産のものを置いているということも珍しくないのです。

 

そしてこれも驚きなのですが、実は抹茶の生産量のトップは三代茶処ではなく、愛知県の西尾なんだそうです。

 

「西尾の抹茶」は地域ブランドとしても認定されています。

 

西尾の抹茶を家元の好みとしている流派もありますが、そのほとんどは加工品としてお菓子や抹茶ラテのようなドリンク類、茶そばなどの食品に使われていて、お抹茶として飲むための抹茶(ややこしい。。。)は多くはありません。

 

そもそも抹茶を作るためには、収穫前から茶の木に覆いをして日光を遮ったり、製茶方法も煎茶とは異なるので時間と手間がかかります。

 

参考→お茶の種類と製法について

こちらも参考に→薄茶と濃茶の違いは?お茶の銘の由来はどこからきているの?

 

 

どうして茶道のお抹茶は京都産がほとんどで、他の地域の抹茶は加工品が多いのかというと、茶道の聖地が京都だからに他ならないでしょう。

 

栄西禅師によって京都に根付いた茶の木は、和菓子とともに宮中で多く用いられたために需要がたくさんありました。

地元で高品質なものが手に入るとなれば、それが何よりです。

 

千利休の孫の代から現代まで伝わる千家流の茶も、大量の宇治抹茶を消費する理由のひとつであることは言うまでもありません。

 

さいごに

「抹茶といえば宇治抹茶」のブランドイメージが定着して、加えていろんな茶道の流派でも宇治の抹茶を使うので、他の産地の抹茶はその知名度に勝てず、需要が伸びなければ生産をやめてしまう農家もあるというのが現状です。

 

それでも、手間ひまかけても美味しいお茶やお抹茶を作っていきたいし知ってほしい、という茶農家の愛情が抹茶の加工品からは伝わります…なんて書くと大げさでしょうか。

 

(余談ですが、埼玉県入間市の三井アウトレットパーク内に、京都でも爆発的人気の抹茶館があるそうです。京都は毎日すごい行列で入る気になれずでした。。。入間なら、実家からそんなに遠くないので行ってみよう!と思うのと同時に、狭山茶の中心地に宇治抹茶の専門店か。。。と思うとなんだか複雑ですね。狭山茶のスイーツも少しは販売していてほしい)

 

全国茶品評会でも上位の大半を占める宇治抹茶。
そのクオリティの高さは疑いなく最高のものだと思いますが、西尾や八女、静岡や狭山の抹茶も是非一服頂いてみたいです。