八百万(やおよろず)の神の国、日本。さすがに暦にもたくさんの神様が!

 

 

日本の神様というと、よく八百万(やおよろず)の神と言われますね。

 

八百万とは、ものすごくたくさん、という意味です。
八百万の神というのは森羅万象(しんらばんしょう・すべてのもの)に神が宿っているという日本古来の考え方で、神道に通じています。

山や川などの自然だけでなく、台所やトイレなど人工物にも神が宿ると考えられ、特に日本の神様は人格や性格を持っているというのも面白いところですよね。

 

 

例えば太陽の神であった天照大神(アマテラスオオミカミ)が、弟の須佐之男命(スサノオノミコト)の粗暴な振る舞いに怒って洞窟(天岩戸)の中に隠れてしまう話は有名です。

(三代歌川豊国「岩戸神楽ノ起顕」)

 

 

もちろん、目に見えるものだけでなく、見えないものにも神様はいると言われています。

 

例えば、方位。

 

方位の神様といえば、思い浮かぶのは中国の有名な四神でしょうか。

 

 

 

中国の方位の神、四神

 

(画像はお借りしました。)

 

方位の神様といえば有名なのは中国の四神(玄武・白虎・青龍 ・朱雀)です。四神はそれぞれ決まった方位を司る霊獣として有名です。

 

  • 玄武(亀と蛇)…北
  • 白虎(虎)…西
  • 青龍(龍)…東
  • 朱雀(鳳凰)…南

 

四神は五行にも対応していますが、その場合は中心に麒麟や黄龍が置かれます。(麒麟が入ると五霊と呼ばれます)

 

  • 麒麟(体は鹿、顔は龍、牛の尾と馬の蹄を持つ)…中央

 

五霊(四神) 方位 五時 五行
青龍
朱雀
白虎 西
玄武
麒麟 中央 土用

 

 

 

日本の暦の方位神

 

暦には方位神という神様がいますが、これは「〇〇の神様」というのではなく、吉神と凶神と言われる神々が一定の期間ある方角に滞在(遊行)し、その方位の吉凶を司るという、面白い位置づけになっています。

 

中国から伝わって日本で昇華した文化はたくさんありますが、陰陽道もそのひとつ。
陰陽道は、中国の陰陽五行説などを由来として、神道や蜜教、修験道などの影響も大いに受けて日本で独自に発展しました。

方位神は陰陽道の神様なので、日本生まれの神様なのです。

 

陰陽道の神々が、昔の人たちの生活にどれだけ信仰されていたのでしょう。
実際の暦と照らし合わせてみました。

 

(クリックすると拡大します。八将神の詳細は下記の表へ)

 

これは慶応4年の京暦の最初の頁です。
三鏡宝珠がありますね。暦のシンボルマークです。

参考記事→暦と三鏡宝珠

 

 

■歳徳神(としとくじん)

牛頭天王の后で、八将神の母。その年の福徳を司る神。
この神様のある方位は「恵方(えほう)」「明(あき)の方」などと呼ばれ、万事に吉とされます。
節分の時期、歳徳神のいる方位に向かって恵方巻を食べるのは有名です。

 

■金神(こんじん)

殺伐を好み戦争や大水を司るといわれ、この神が所在する方位は極めて凶。
物心すべてが冷酷無残になると言われます。
土木工事、移転、嫁取りなどを忌み、これを犯すと「金神七殺(こんじんしちさつ)」といって家族7人が殺されると言われました。
家族に7人いないときには、隣人にまで災いが及ぶとされて人々に恐れられました。

 

■八将神(はっしょうしん)

方位の吉凶を司るとされる八神の総称。
旧暦の暦では初めに書かれています。
その年の十二支によって位置する方位が決まります。

八将神   記載例 記載例解説
太歳神
(たいさいじん)
その年の十二支の方角と同方位に位置する(例えば子の年は北)。この方向に向かってことを行なえば万事吉。ただし樹木伐採は凶。 大さいたつの方
此方ニむかひて万よし
但木をきらす
この方向に向かってことを行なえば万事吉。
ただし木を伐るのは凶。
大将軍
(だいしょうぐん)
万物を殺伐する凶神。同じ方位に3年居続けるので「三年ふさがり」ともいう。 大志四うくんねの方
ことしまて
三年ふさかり
金星の精。殺伐を司り、その方角は凶。同方位に3年とどまって次の方角に移ることから、「三年ふさがり」ともいう。
大陰神
(だいおんじん)
この方角に向かって結婚・出産など女性に関することは凶。学問や芸術は吉。 大おんとらの方
此方ニむかひてさんをせす
この方角に向かって産をせず。
歳刑神
(さいきょうじん)

殺伐を司る凶神。耕作や種まき、土を動かすことを忌む。

さいけうたつの方
むかひてたねまかす
この方角に向かって種まかず。
歳破神
(さいはじん)
常に太歳神の反対に位置する。この方角への引越、旅行、結婚は凶。 さいはいぬの方
むかひてわたましせす
ふねのりはしめす
この方角に向かってわたまし(引越)せず。
船乗りはじめず。
歳殺神
(さいせつじん)

殺伐を司り万物を滅する凶神。この方角への引越、旅行、結婚、建築、特に嫁取りは凶。

さいせつひつじの方
此方よりよめとらす
この方角より嫁とらず。
黄幡神
(おうばんじん)
土を司る凶神。この方角への引っ越し、建築、井戸掘りなどは凶。 をうはんたつの方
むかひて弓はしめよし
この方角に向かって弓はじめなどは吉。
豹尾神
(ひょうびじん)
常に黄幡神と反対の方位に位置する。不浄を忌み嫌う神。この方角への排泄、家畜類を求めることは凶。 へうひいぬの方
むかひて大小へんせす
ちくるいもとめす
この方角に向かって大小便せず。
家畜類を求めず。

 

 

■土公神(どくうじん)

土公神が厳密には方位神には入らないですが、中国の四神でいうところの「麒麟」と同じ位置づけのように思います。
土公(どこう、つちぎみ)ともいい、土を司る神で、四季により位置を変えます。
春は竈(かまど)に、夏は門に、秋は井戸に、冬は庭に遊行するとされ、この神様が遊行する機関はその方位で土木工事を行ったり、土を掘り起こしたりすることを忌みます。

 

 

 

 

さいごに

 

方位神は吉神と凶神に分けられると書きましたが、上にあげた方位神は、歳徳神の他は全て凶神です。(太歳神は基本的には吉神とも言われます)

吉神は他にも歳禄神(さいろくしん、一年の吉福を司る)や月徳合(げっとくごう、その月の吉福を司る)などいるのですが、暦には出てきません。

暦注も凶日が多いのですが、たまに来る吉日を心待ちにして、日々慎ましく暮らしていたということなのかしら。。
またはそういう幕府の策略か?

 

 

よく「暦は縦に読むな、横に読め」と言われます。
暦には方位神の他にも歴注(暦に記載される日時・方位などの吉凶、その日の運勢など)がたくさんあって、その全てが吉になる日を探 そうとすると、なかなかそんな日は見つからないよ、という意味です。

 

歴注については次回、書いてみたいと思います。