日本建築,  茶室,  茶道

茶室の天井はどうなっているの?草庵茶室の天井は見る価値大有りです!

 

日本全国に散らばる、格式のある日本建築。

茶室やお城、寺院などを訪れるとき、みなさんはその建築物の何を見るでしょうか。

 

現地にあるパンフレットや説明の立て札には「この城は誰々が作った城です。」とか「この茶室は何年に誰それが作ったものです。」という由来がだいたい書かれています。それに加えてこの建物は伝統的な書院造りだとか、何年に焼失して再建されたとか、この部屋は将軍の間だったとか、この柱の刀傷は新選組がつけたものだとか、歴史を思わせる記述も付け加えられたりします。

 

それなのに、その建物の天井のことはあまり解説されません。

でも実は天井を見れば、その城の主の部屋とか主要な部屋がわかりますし、茶室に入った時にどこに座っていいか迷ったら、天井を見ると客座がわかるとも言われます。

 

日本建築はその歴史の流れから、寝殿造り、書院造り、数寄屋造りの3つに大きく分けることができます。


寝殿造りには天井はありませんが、書院造り以降の建築や、特に数寄屋造りの茶室の天井の斬新さには度肝を抜かれます。

 

 

代表的な天井の種類(作り・構成編)

平天井(ひらてんじょう)
床面と水平な天井のこと。一般的な家庭の天井はこれが多いです。

落ち天井(おちてんじょう)
平天井に高低差をつけた二段造りとなっている天井の、低い方の天井のこと。落ち天井は点前座に用いられることが多く、これにすることで点前座が下座であり、亭主が客に対してへりくだるという意図を表しています。

掛込天井(かけこみてんじょう)
庇(ひさし)が室内に貫入して、屋根裏の構成を室内に見せて、傾斜天井となっている天井のこと。

舟底天井(ふなぞこてんじょう)
天井の中央が両端より高く、三角形に盛り上がった天井のこと。
見上げると船の底のように見えるためにこの名があります。

 

 

代表的な天井の種類(仕上げ編)

竿縁天井(さおぶちてんじょう)
竿縁(さおぶち)と呼ばれる細長い木材を等間隔で渡し、その上に板を張った天井のこと。
ちなみに竿縁が床の間に向くのは、床差し天井といって忌み嫌われるので注意。
金沢の兼六園にある成巽閣(せいそんかく)の「越中の間」の天井は床差しの竿縁天井ですが、床前に三角形の杉の網代天井を組んで床差し天井にならないように工夫されています。
なんとも大胆な意匠です。

 

網代天井(あじろてんじょう)

 

竹皮や割竹、杉(すぎ)、檜(ひのき)、椹(さわら)などの片板(へぎいた・枌板)を互い違いにくぐらせて編んだものを張った天井のこと。
上のイラストに載せた不老庵のアーチ状の天井も網代天井です。

 

簾天井(すだれてんじょう)

葭(あし)、萩(はぎ)、淡竹(はちく)、寒竹(かんちく)、木賊(とくさ)などを簾編みにしたものを張った天井のこと。

 

蓆天井(むしろてんじょう)

蒲(がま)、真菰(まこも)、藤(とう)などを筵(むしろ)に編んだものを張った天井のこと。
簾天井よりも侘びた印象を与えます。
特に蒲(がま)を使ったものは蒲天井と呼んだりします。

 

化粧屋根裏(けしょうやねうら)

平らな天井を張らず、屋根裏の構成を室内にそのまま見せた天井のこと。

 

格天井(ごうてんじょう)
角材などを格子に組んで、その間を板、網代、紙張りなどにした天井のこと。
寺院や城、書院造りに多いいわゆる「真」の天井です。

 

 

待庵の天井を見てみましょう。

日本最古の草庵茶室といえば、国宝 待庵。

2018年4月25日〜9月17日まで六本木ヒルズの森美術館で開催されていた「建築の日本展」では、待庵の原寸大模型が展示され話題になりましたね。

 

(森美術館Instagramより)

 

わたしも見にいきましたが当時は茶室に関する知識もそんなになく、並んで中にも入りましたが、
「狭い中にも広がりを感じる茶室と言うけど、、、やっぱり狭いな。」
なんて思って終わり、今見返してみると天井を撮った写真が一枚もない。。。

惜しいことをしました。

 

と言うわけで、写真はお借りしましたが、この素敵な天井をご覧ください!

(森美術館Instagramより)

 

わずか畳二畳のスペースに、3種類の天井が組み合わされています。
(ちなみに次の間は点前座と同じ板張りの竿縁天井になっています。)

 

床の間の前(写真奥)と点前座(写真左)は薄板を竹の竿縁で止めた竿縁天井。
板の向きが直角になるように突き合わされています。
よく見ると、細竹の竿縁が2本重ねて渡してあります。

 

お客さまが座る場所の上は、屋根の傾斜がそのまま見える化粧屋根裏(けしょうやねうら)になっています。ここの竿縁は太い竹1本と細竹2本が格子状に組み合わされています。なんて素敵な…!

 

 

さて、点前座と床前の天井は「平天井」になっています。

化粧屋根裏のように天井が高い方が部屋が広く見える気がしますが、どうして点前座はともかく、床前まで一段低い「落ち天井」になっているのでしょうか。

 

これは推測ですが、待庵はお客が躙口から入った時に、まず正面に床の間が見えます。躙口から入ったところで上を見ると床前で天井が一段低くなり、さらに落し掛けがあるので、断然「奥行き」が出て室内が広く感じられます。

そして化粧屋根裏より格が上の「平天井」を「落ち天井」にすることで客座と格を合わせ、尚且つ化粧屋根裏の竿縁が格子状のため、床差し天井のようになるのを防ぐ意味もあったのかもしれません。

 

 

格天井の茶室「灯芯亭」

格天井といえば書院造りの代表格の天井ですが、格天井を使っている有名な茶室があります。

 

大阪府三島郡にある水無瀬神宮の「灯芯亭」。

天井の格縁は角材ではなく小丸太で二重に組み合わされています。(こういう組み方を吹き寄せというらしい。なんと風流な呼び方でしょう。)
格間には葭(よし)、葦(あし)、萩(はぎ)、蒲(がま)など10種類以上の灯芯(とうしん)になる材料が使われていて、灯芯亭という号はそれが由来となっています。

三畳台目という小間の茶室ですが、書院造りがベースになっていて躙口はなく、貴人好みの草庵風茶室になっています。

 

さいごに

天井ひとつ取ってみても見どころが満載の茶室。

この茶室は誰が誰を招くために作ったのだろう、その時はどんなしつらえをしたのだろう、と想像するだけで楽しくなります。

これから茶事や茶会が多くなる季節。
お出かけになる時はお茶とお菓子だけでなく、茶室の天井も是非お楽しみください。

 

 

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