「本日はお日柄もよく…」のお日柄ってなに?江戸時代には数百もあった歴注。
歴注、と言ってもピンとこないけれど、「大安」や「一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)」と言えば、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
結婚式の日取りを決めたり、お財布をおろすのに良い日、というイメージがあるかもしれません。
また、結婚式のスピーチなどで、「本日はお日柄もよく、~」という台詞を耳にしますが、「お日柄」って、いったい何のことなのでしょうか。
お日柄がいいってどういうこと?お日柄が悪い日もあるの?
なんて不思議に思ったことはありませんか?
(ちなみに昔はわたしも、お日柄=天気のことかと思っていました。笑)
お日柄の良し悪しを決めるのは、「歴注」。
昔の暦に記載されていた注記事項のことです。
かつて暦は、江戸時代に幕府の管理下に置かれるまでは民間で自由に作ることができました。
暦に書かれる歴注も、その内容や配置が地域によって異なり、歴本は生活必需品としてだけでなく、旅人の土産物としても人気だったそうです。
暦の中でも人々に親しまれていた歴注が「中段十二直」。暦本の中段に記載されていたので中段とも呼ばれました。
参考記事→歴注といえば中段、と言われるほど大切だった十二直。
また、暦本の下段に書かれていた「歴注下段」は天文学的・科学的な根拠はない迷信的な要素が多いものでしたが、日々の吉凶を占う内容のものが多く、人々に親しまれていました。
中段や下段などをまとめて歴注と呼びますが、ここではその歴注の一部を紹介します。
歴注 |
解説 | 暦の記載例 |
干支 |
干支をベースにして多くの歴注が作られた。 日にちのすぐ下に記載されることが多い。 |
きのえね(甲子)、 きのとうし(乙丑)、 など |
朔望 |
月の満ち欠け |
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潮汐 |
潮の満ち引き |
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二十四節気 |
太陽が移動する天球上の道(黄道)を24等分したもの。 |
立春、立夏、立秋、立冬 春分、夏至、秋分、冬至 啓蟄、小満、白露、大雪 など |
雑節 |
二十四節気以外に、季節の変化を表す。 |
半夏生、二百十日、土用、彼岸 など |
六曜 | 現代で最もポピュラーな歴注。 中国から伝わったものをベースに、江戸後期には現在の名称や解釈になったとされる。 |
先勝、先負、大安、 |
七曜 | 古代中国の天文学で、肉眼で見える五惑星を五行(木火土金水)に結び付け、太陽(日)と月を併せたもの。 | 日、月、火、水、木、金、土 |
十二直(中段) |
江戸時代に最も重視された歴注。 |
建、除、満、平、定、執、破、危、成、納、開、閉 |
二十八宿 |
28種類の星座に吉凶の意味をつけ、それを日々に配して占う。 |
角、亢、氐、房、心、 尾、箕、斗、牛、女、鬼、 など |
九星 | 九星気学とも言い、中国から伝わった 方位術。 |
一白・二黒・三碧・四緑・五黄・ 六白・七赤・八白・九紫 |
暦注下段 |
科学的な根拠はなく迷信的な要素が強いが、昔の人々には人気があった。 |
天しゃ(天赦日)、 神よし(神吉日)、 天おん(天恩日)、 十し(十死日)、 ●(受死日)、 など |
選日 | 上記以外の特定日を指す(でも実際は結構 曖昧だと思われます)。 撰日、雑注とも呼ばれる。 |
八専、十方暮、不成就日、 |
この歴注、ただでさえ多いのに、並びや記載方法も例外があったりするので、昔の人も把握しきれなかったんじゃないかなあ。。と思います。
例えば六曜。
これは旧暦一月の朔日(ついたち)は「先勝」になり、旧暦二月の朔日は「友引」から始まる…という法則があるので、現代のカレンダーに書いてあるのを見ると、「あれ、なんでここで順番飛んでるの?」なんてこともあります。
逆に旧暦ではわかりやすすぎて面白くなかったのか、他の歴注で余白が埋まってしまったからか、江戸時代以前に出回った暦には六曜は記載されていません。
ちなみに九星や、選日の三隣亡も、明治以降に目にするようになった比較的新しい歴注だそうです。
昔の暦でも、「二十八宿の『鬼(鬼宿)』は最高の吉日なので、大事だから歴注下段にも書いとこう!」みたいな二重記載があったり、十二直と二十八宿両方に「危」があったり、うーん、なかなかわかりにくい。
さいごに
「お日柄」とは、歴注に記載された吉凶を表す言葉。
中段十二直が「満」で二十八宿が「鬼宿」、六曜が「大安」で、、、なんて日があったら「最高のお日柄」ですね。
でも実際にはすべてが最良の吉日というのはほとんどありません。
各日の暦注を縦に読んで吉凶を見ていくと、吉となる暦注と凶となる暦注が同じ日に出て来るので、日を定めることがとても難しくなります。
「暦は縦に読まずに横に読め」
と言いますが、これは自分が最も信頼する項目を決めて暦を横に読み、候補日が何日かある場合には自分の都合で決めるのが最終的にはよい、ということです。
でも占い好きの日本人、きっと昔の人も、歴注に頼りすぎて身動きが取れなくなってしまうこともけっこうあったんだろうなあ。。。なんて考えると、なんだか親近感がわいてきますね。