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流派によっても全く違う!お菓子のいただき方〜表千家と武者小路千家編

 

お茶の世界だけではないと思いますが、流派によって所作や作法が変わってくるということはよくあります。

そして、「自分の習っている流派はわかるけど、他流派の作法はよく知らない」というのもすごくよくある話です。

 

わたしは表千家のお茶を勉強していますが、先日、武者小路千家(官休庵流)の方とお話する機会がありました。
同じ千家と言えどもそれはもういろんな違いがあって、所作ひとつ取ってもお互いに「えーっ!」と驚くこともたくさんあり、とても楽しい時間を過ごしました。

 

お点前の所作などもそうですが、客がお菓子を取る順番も表千家とは違い、ちゃんとそれぞれに理由もあるのです。

 

 

例えば、食籠(じきろう)に主菓子を5個並べる場合。

表千家の場合は、以前の記事にも書きましたがこのようになると思います。

 

参考→干菓子は「並べる」のではなく「盛る」。お客の時はどこから取ればいいの?実はお菓子にも格があります。

 

 

では、この場合はどうでしょうか?

梅の花のように5つを盛った場合ですね。

 

表千家の場合は、手前の右側から取るのが基本となりますので、

このようになると思います。

 

では、武者小路千家はというと、

このようになるそうです。

 

まず正客が右手前を取るのは同じですが、その後は「時計回り」に取っていくそうです。

そしてこれは器が深いものの場合の取り方で、器が浅い場合にはいちばん奥を正客が取って、そこから時計回りに取っていくそうです。
上のイラストだと、4ー5ー1ー2ー3、の順で取るということになります。

 

 

では、先ほどのサイコロのような並べ方に戻りますね。

これは表千家流です。

右手前から取っていき、最後に真ん中が残るようにします。

 

これは、昔から日本は右利きの文化だったため、

  • 他の菓子を傷つけずに1番取りやすいところから取る
  • 最後まで見た目が美しいように真ん中を残して取る

ということなんだとわたしは解釈しています。

 

 

では、武者小路千家流はどうでしょうか。

 

 

なんとこれ、すごく驚いたのですが、真ん中から取っていくのだそうです。

 

えっ、どうして?とびっくりして聞いてみると、

「茶席というのはそもそも正客をもてなすためのものですから、いちばんの客が真ん中を取ります。そしてその後は右手前から時計回りに取っていきます。」
とのこと。

 

これには、なるほどー確かに!と納得してしまいました。

 

流派によって作法は違えど、然るべき理由があってそうしているのだなあ、と大変勉強になりました。

 

ちなみに干菓子は、2種盛ってある場合は、表千家は奥から取りますが、武者小路千家は手前から取るそうです。

 

 

大寄せの茶会では、他流派の席に客として参加することも珍しいことではありません。

お点前さんの所作が自分の流派と違っても、「へえ、この流派はこうなのね」と納得してすみますが、お菓子のいただき方はそうはいきません。

 

例えばお隣の席の方が自分と違う作法だったとして、「他流の方かしら」と思えばそれで終わりですけれど、「あっ、間違えてる!」と思ってしまうと、なんだかはらはらしてしまって、自分がその後の茶会を楽しめませんものね。

 

どの流派の席に入っても、自分の先生に習っている通りのやり方でやるのがいちばん良いと思いますが、「流派によって作法は全く違うが、それぞれにちゃんと意味がある」ということを知っておくのは、大事だなあと思いました。