和食器,  茶道具

蓋付の器、蓋の大きさが違うのは単なるデザイン?

 

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

陽気もよくて花も咲き乱れ新緑もまぶしく、ふらふらと外出したい気分ですが、今年はがまんがまん。。。最近は緊急事態宣言により自宅にいる時間が増えたので、断捨離をしたり料理をしたりして過ごしています。

 

 

家にいるとお茶を飲む回数も増えるわけで、いろんなお茶をネットで買ったり、いい茶器がないか探したりしています。もともとが器好きなので、茶器にとどまらず色々な陶磁器をネットで眺めては和んでいますが、ふと気になったのが、
「蓋付きの器(蓋物といわれます)は、蓋の大きさが器によって違うのはどうしてなんだろう?」
ということ。

蓋の形や素材によっても格があるのかしら、と思って調べてみたけれど、これ!という情報は見つからず。

 

食器は民芸品。毎日使うものだから、格よりも使い勝手が大事です。
ということは和食器の蓋の大きさは用途によって違うということなのかもしれません。

 

 

色々な器の蓋

 

例えば汁碗や煮物碗。

これは蓋が碗よりも小さいです。
食べ物や汁を盛った後に、温かい状態を保つのに最適です。
あとはもし料理が冷めてしまっても、蓋を開けたときに蓋裏の水滴が器の外にまわってしまわないように、蓋が小さく作られているのだと思います。

 

茶碗蒸しに使う蓋付の器は、蓋が本体より大きいものがほとんどです。
これは、蒸し器に入れて調理する時に蒸気が器について水滴になるので、この水滴が碗の中に入らないようにするためです。

 

そば猪口なんかだと、薬味を乗せる小皿が蓋がわりになってセットできるものもありますね。他にも、日常には使えないんじゃ。。。っていう素敵すぎる珍味鉢やデザインがツボすぎる蓋物などなど。探せばザクザクでてくるものです。

 

 

お茶碗は、温かいお茶の温度と香りを保つために少し大きめの蓋が付いていて、蓋裏には茶碗の縁にはまるように丸い出っ張り(なんていう呼び名なんだろう?)がありますね。お茶を飲む時は蓋ははずして裏返しておくので、蓋のつまみはシンプルなデザインが多いです。

 


以前、煎茶道のある流派の新春茶会にお邪魔したときは、こんなお茶碗でいただきました。
すっぽりとかぶさった蓋が可愛らしい。新春茶会だったので茶托も紅色でした。

 

 

↑この有田焼の湯呑みも、素敵すぎる・・・!
海外の方にも受けそうなデザインだけど、外側のシンプルさに潔さも感じられます。

 

 

 

そういえば去年、北野天満宮の野点の茶会に参加したときに、数茶碗がモダンで素敵で、高台裏を拝見すると「made in Italy」の文字。
あー、これこそが異文化交流!と感動した思い出があります。

 

ちなみに蓋碗(がいわん)というお茶碗もあり、これは例外で蓋がお茶碗本体より小さいです。中国茶で使うことが多く、茶葉をお湯をお茶碗に入れて、指で蓋を軽く押さえて直接お茶を飲んだり、茶海(ピッチャー)に移してから湯呑みに注ぎわけます。日本茶の場合はそのまま飲むことが多いです。

 

 

 

茶道具の蓋

 

蓋物といえば、茶道具も、お茶碗と建水以外は蓋がついてるのでは?というほど蓋が多いです。
茶道具、特に水指には塗り蓋か、器本体(胴)と同じ素材でできた共蓋(ともぶた、または替蓋(かえぶた))があります。(夏場には涼感を出すために大きな葉っぱを蓋に使うことも!)
この塗蓋と共蓋も、水指として胴と一緒に造られた共蓋が本来の蓋で、塗蓋は蓋がないものを水指に転用したときに後から誂えたものだから格が落ちるということも聞きますが、「真・行・草」のお点前では「行」以上の席では塗蓋が使われるとも言います。流派によっても違うのかもしれませんが、家元の初釜や献茶式などでは共蓋の水指が使われています。以前茶道会館で見た千家十職の永楽善五郎氏による干支の水指も、全て共蓋。お見事でした。

 

こちらは塗蓋の水指。

 

棗は蓋と胴は同じ素材です。濃茶で使う茶入は牙蓋(げぶた)といって、象牙でできた蓋が一番良いとされています。

茶道具は、使い勝手というよりはデザインや質が重視されているイメージです。日常使いの民芸品ではないので、その茶席の趣向や格に合った道具が選ばれます。

 

 

さいごに

 

器に蓋をする本来の意味は、埃や虫などいろんなものから「中身を守る」こと。

そこから「温度を保っておいしくいただく」「蓋を開けたときに喜んでもらえるよう盛り付ける」「器そのもので和んでもらったり季節感を感じてもらう」というふうに発展して、今やこんなにたくさんの蓋物があるのかと思うと、何だか、日本文化はすごいなあ。。。

 

日常の食卓に蓋物は中々出ませんが、ふとしたときに使えるものを探してみようかしら。

 

蓋付の器、蓋の大きさが違うのは単なるデザイン? はコメントを受け付けていません