浮世絵,  風物詩

夏の風物詩、「浴衣」の歴史と着こなしポイントを美人画と共にご紹介。

 

京都や浅草、金沢などの観光地では、日本人外国人を問わず、季節も問わず、着物を着ている方が多いですが、ここ何年かで観光地以外でも夏の浴衣女子・浴衣男子の人口がぐんと増えた気がします。

 

花火大会やお祭りだけでなく、イベントやお出かけ着としても定着してきたのかと思うと、着物好きとしては嬉しいですね。

 

ということで今回は、浴衣の歴史を調べてみました。

 

そして着物をあまり知らなくても、浴衣を着るときは素敵に着こなしてほしい!というわたしの勝手な希望から、「着物(浴衣)がサマになるコツ」もお伝えしたいと思います。

 

 

*記事内の浮世絵、写真はお借りしたものです。

 

 

もともと浴衣は入浴後の「湯帷子(ゆかたびら)」が始まりです。

 

その昔、平安時代のお風呂は一度に大人数が入れて水もたくさん使わなくて済むという蒸し風呂(サウナ)が主流でした。

 

まず蒸し風呂で汗をかいてから、浮き出た垢や汚れを笹の葉や布で落とし、入浴後はお湯や水で身体を流してから手拭いで拭いていたようです。

 

その入浴の際に、湯気が直接当たらないように布をお尻の下に敷いたり、また人目を避ける意味でも薄い着物(湯かたびら)を羽織ったりしました。

 

これが「風呂敷」と「浴衣」の語源となっています。

 

ちなみに帷子(かたびら)というのは「夏の単衣の着物」のことで、主に麻のものを指すようです。

 

 

麻の着物は風通しが良く吸水性もあることから、安土桃山時代頃には入浴中だけでなく、入浴後に汗や水分を取るためにも着られるようになります。

 

そして江戸時代になって風呂屋(銭湯)が普及すると、浴衣は庶民の間でも湯あがり着として定着するようになります。

 

鳥居清長「女湯」(1787年頃)

 

 

蒸し風呂の中で使っていた時代には麻素材が主流でしたが、湯上がりや就寝時に着るようになるにつれて、布は木綿が使われることが多くなります。

 

宮川春汀「湯上がり」(1898年)

 

 

歌川広重「くつろぐ夏の猫美人たち」(1842年)

 

右の猫の浴衣の柄は蛸!かわいい。
真ん中の猫の団扇にも注目です。

 

 

その後だんだんと浴衣はその範囲を広げ、寝間着や家着としてだけではなくちょっとした外出着としても着られるようになります。
江戸中期〜後期にはお揃いの浴衣を着て盆踊りや花見に出かけるのが流行しました。

歌川広重「東都名所 両国夕すゞみ」(1850年頃)

 

余談ですが当時は浴衣といえば白地か紺地が定番だったそうです。

白地の浴衣は昼間でも涼しく着られますし、紺地は藍染で、原料の蓼藍は虫除けやあせもにも効果があったので夕方以降の外出時に向いていたようです。

 

 

もうひとつ余談ですが、どうやら江戸時代の人々も、湯あがり時とお出かけ時では浴衣の着方を変えていたようです。

 

歌川広重「四季の花園 朝顔」(1847〜1852頃)

 

朝顔をバックに立っているこの美人も、浴衣の下に襦袢が見えますね。

湯文字(下着)かとも思いましたが、襟元からも布が見えているということは、浴衣の下に長襦袢も着ていたということでしょう。

湯上がりに家の中で浴衣を着ている時には襦袢は描かれていませんから、外出の時は敢えて襦袢を着て着物風に着ていたのかもしれません。

浴衣の柄も外出着は華やかです。

 

 

そうして明治時代には、主に夏の外出着として現代のように着られるようになっていた浴衣。

 

現代はまた昔とは違った着こなしが流行ったりもしているようですが、基本を知って「はずす」のは大いに有りだと思います。

 

 

ここからは現代の浴衣の着方についてです。

 

 

基本中の基本。和服は男女とも右前です!

 

和服は右前。

ここを間違えてしまうと、どんなにどんなに素敵に着こなしていても、残念…!!となってしまいます。

 

右前とは、自分の体から見て、右が前(自分側)に来るようにすること。

右、左の順で衽(おくみ・前身頃)を合わせます。

 

着た後に「右手で懐に物を入れられる」かどうか、と覚えるとわかりやすいです。

鳥居清長「美南見十二侯・七月 夜の送り」より(1784年頃)

 

小股で歩く。

 

先日、前方から歩いてきた素敵な浴衣女子が、決して大股ではなく洋服と同じように歩いていたのですが、歩くたびに裾がめくれて太ももまで見えてしまっていました。

本人も気にして手で押さえたりしていたのですが、見ているこちらが気まずい気持ちに。。。

鳥居清満(江戸初期)

 

まず下には肌襦袢か、それに変わるものを着ましょう。

その上で、いつもより少し小股に歩きましょう!

 

足元は下駄?サンダル?スニーカー?

 

最近本当によく見るのが、浴衣に普通のサンダルを合わせている若者たち。

特にウエッジソールや、フラットのサンダルの方が多いですね。

 

なんと今は浴衣にサンダルやスニーカーも「おしゃれ」なんだとか。

 

個人的にはどうしても浴衣×サンダルは「間に合わせ感」がぬぐえなかったのですが、雑誌やネットを見てみると、おおー、これなら浴衣にサンダルも合うかも!と思う着こなしもあるのです。

 

何がちがうのかよーく見てみると、その差は浴衣の柄。

 

注染とか、いかにも浴衣という柄にはやっぱり下駄が似合います。

 

ストライプとかチェック柄などの洋服にも使う柄ならサンダルやブーツも似合います。
(夏にブーツ?というのはさておき。。。)

 

 

こちらはカンガ(アフリカ布)の柄の浴衣。

これなら確かにエスニックなサンダルも似合います。

 

他にも例えば、紅型染め(沖縄)の浴衣に島ぞうり…なんていうのもいいかも。
スニーカーは、浴衣ではないけどデニムの着物が一番似合うかもしれないですね!

 

秋になったらこんな足元コーデもおススメです!
着物の紅葉柄と、クラシカルなブーツがとっても似合ってます。

 

もちろん許される年齢や人柄もありそうですが(^^;

 

 

上級編:足袋を履くなら裾は少し長めがおすすめ

 

昔は浴衣といえば裸足に下駄でしたけど、お洒落着として着るなら足袋を履くのもいいですね。

 

 

浴衣にはレース足袋が涼しげで清潔感もありおすすめです。

 

普通、浴衣は着物よりも短めにくるぶしがみえるくらいの丈で着ますが、足袋を履く時には浴衣の裾から足袋の履き口が見えないように、少し長めに着るのが素敵だと思います。

 

それに帯締めや半襟などを合わせると、夏だけでなく春や秋にも着物風に浴衣を楽しめます。

 

 

浴衣は着物と違って家で洗えるので、夏の和装にはとってもおすすめ。

 

ぜひいろんな着こなしを楽しんでください!

 

 

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