茶の湯道具 <柄杓>
茶の湯において欠かせない道具のひとつである柄杓。
「日日是好日」の主人公 典子は、柄杓から落ちるお湯の音をトロトロ、水の音をきらきらと表現しています。
なんて素敵な感性なんでしょう、水がきらきらと聞こえるなんて、青春真っ只中の若い人の感覚だなあ、、、と思っていたけれど、映画を見た後のお稽古の時に注意して聞いてみたら、なるほど…たしかにきらきらと聞こえます。
いやいや、水はさらさらでしょう、と映画を見た時には思ったけれど、季節や自分の心持ちによってもだいぶ変わる気がしてきました。
どちらにしても、音を聞きながらお点前をすると、いつものお稽古の所作も優雅に、美しくなるような気がするから不思議です。
さて、脱線しましたが今回は柄杓の話でした。
神社の手水場にある柄杓などは合の部分が金属のものもあり、柄も竹に限りません。
お茶の世界で使う柄杓は合から柄の部分まで、全て竹でできています。
柄杓といって、一番に思い浮かぶのは、お点前で使う「点前柄杓」ではないでしょうか。
それではまず、柄杓の一般的な形と部位の名前をご紹介します。
実は茶の湯で使う柄杓は、1種類ではありません。
大きく分けて3つの種類があります。
点前(てまえ)柄杓・・・お点前の中で使われる柄杓。上のイラストのものです。
水屋(みずや)柄杓・・・水屋仕事をする時に使う柄杓。かいげと水漉しがあります。
蹲踞(つくばい)柄杓・・・茶室に入る前の蹲踞(つくばい)で手と口を清めるために使う柄杓。
そして点前柄杓も大きく3つに分かれます。
炉柄杓
風炉柄杓
差し通し柄杓
名前の通り、炉柄杓は炉で、風炉柄杓は風炉でのお点前で使います。
とりあえず差し通しは置いておいて、まずはこの2つの違いを説明します。
昔は釜の大きさにあわせて柄杓を作ったといわれます。(なんと贅沢な)
炉釜の方が風炉釜に比べて大きく作られるため、一般的には炉の柄杓の方が合が大きいですが、現在はこの限りではなく、合が小さめの炉柄杓もありますし、炉と風炉兼用の柄杓というのもあります。
炉用と風炉用の柄杓、合の大きさだけで見分けるよりも簡単で確実な見分け方があります。
切止(柄の先の部分)を、ようくご覧ください。
<風炉用>切止(きりどめ、柄の先)が身の方を斜めに切ってある。
<炉用>切止が皮目の方を斜めに切ってある。
釜に柄杓を預けた時に、切止が見えないのが正解、と覚えると間違えません。
持ち方も微妙に違い、風炉は柄杓を短く持ち、炉の時期は柄杓が長くなるように持つと美しいです。
普段のお点前で使用するのは、月形(つきがた)といって、柄が合の付け根でとまっている形のものですが、台子や長板など杓立に柄杓を飾るようなお点前では差し通しのものを使うことが多いです(合の中に柄先が差し通してあるためこう呼びます)。
差し通しは、切止を真っすぐに切ってあります。
ただ、わたしは今まで差し通しの柄杓でお点前をした記憶がなく。。。
数年前に祇園祭の菊水鉾茶会に参加した時も、柄杓は風炉柄杓でした。
初釜で皆具や台子を使った時も、差し通しではなかったと記憶しています。
確かこの時は柄杓を使うたびに杓立に戻すことはせずに、最初に杓立から柄杓をとったらお点前中は風炉に預け、最後にまた杓立に戻すお点前だったと思います。
そういう場合には風炉柄杓でいいということなのか、これが例外だったのか。
それとも昨今は差し通しを使わないことも多々あるのか、、、は、正直なところわかりません。
ちなみに蹲踞(つくばい)柄杓も差し通しですが、こちらは竹ではなく杉でできています。
手水に渡して使うため、柄は少し長めです。
柄杓といっても、素材も形もいろんなものがあるのですね。