日本のお茶,  ,  風物詩

八十八夜ー浅蒸し茶と深蒸し茶

 

※アイキャッチ画像:「難波屋おきた」喜多川歌麿

 

早いもので、今年も新茶の季節が近づいてきました。

 

新茶といえば八十八夜とよく言われます。八十八夜という名前が商品名になっているお茶もよく見かけます。

 

 

 

八十八夜

八十八夜とは雑節のひとつ。
立春の日を1日目として、88日目にあたる日を指します。
暦でいえば、春分を過ぎて立夏の少し前、春土用の終わりごろになります。

2021年の八十八夜は5月1日です。

 

参考→二十四節気と五節供、雑節

 

(八十八夜は雑節なので、旧暦の頃からあります。ということは、お月様の満ち欠けにも関係している?と思い調べてみたら、八十八夜はその年によって満月であったり、満月の少し前であったりとズレはあるようです。でもやはり上弦の月〜満月の間の月が満ちていく時期になることが多いです)

 

八十八夜の辺りから気候が安定してくるので、農家では農作業を本格的に始める目安にしているそうです。
茶摘みや稲の種まきもこの頃から始まります。
また、八十八は組み合わせると「米」という字になること、八十八は末広がりで縁起が良いので、豊作祈願の行事をすることもあるそうです。

また、八十八夜に摘んだお茶を飲むと病気にならずに長生きするとも言われています。
縁起を担ぐという意味だけでなく、実際にお茶の新芽に含まれる栄養は、八十八夜前後のものがいちばん豊富なんだそうですよ。

 

 

 

深蒸し茶と浅蒸し茶

 

日本で作られる日本茶のほとんどは「蒸し」て発酵を止める「蒸し茶」です。

(「茶の製法」茶ガイドより)

 

 

蒸し茶は綺麗な水色(すいしょく・お茶の色)とまろやかな味が特徴。
蒸し茶と比較されるのは釜炒り茶ですが、釜香と呼ばれる香ばしい香りが釜炒り茶の特徴です。
実は海外では茶葉を焙煎してお茶を作るのが主流なので、中国茶や台湾茶の緑茶は、お茶の水色が緑よりも黄色~茶色寄りになります。

 

日本茶を作る時、一般的な蒸し時間は30秒~40秒ですが、「深蒸し茶」はその2倍から3倍、60秒~80秒ほど蒸します。更に長く蒸した(180秒前後)お茶を「特蒸し茶」というそうです。
深蒸し茶のように長く蒸すほど、茶葉が細かくなります。

 

 

深蒸し茶に向いているのは、陽当たりの良い平地やなだらかな斜面で栽培した、厚みのあるしっかりした茶葉です。山の中で栽培する、薄い柔らかな茶葉は長時間の蒸しに耐えられないので深蒸しには向いていません。
浅蒸し茶は、切れのある渋みと爽やかな甘み、明るい澄んだ水色が特徴のお茶。
山の中で栽培された厚みのない柔らかな茶葉が浅蒸しに向いているとされています。

 

江戸時代以前から、日本茶は「浅蒸し」で作られていました。
「深蒸し」という製法が産まれたのは昭和のことです。
それまでは浅蒸しという言葉はありませんでしたが、「深蒸し」製法と区別するために「浅蒸し」「深蒸し」と呼ばれるようになったそうです。最近では「深蒸し茶」の方がよく見かけるし、ペットボトルのお茶も抹茶を加えたりして緑色を強調した製品が多いですね。

 

深蒸し茶のいいところは、

1.お茶を淹れるのに時間(抽出時間)が短い。
2.誰でも、比較的美味しく淹れられる。
3.水色(お茶の色)が綺麗な緑色。
4.お茶の栄養素を効率よく摂取できる。

深蒸し茶はその製造過程で茶葉が細かくなるため、通常は茶葉に残ってしまう食物繊維やβカロテン、ビタミンE、ミネラル(銅、亜鉛、マンガンなど)も抽出することができます。お茶の色が鮮やかな濃い緑色なのは、茶葉の微粒子が浮遊しているからで、茶葉ごと飲めるので栄養も摂れるというわけです。

 

一方、浅蒸し茶のいいところは

1.お茶の香りを楽しめる。
2.茶葉の形状が綺麗。
3.湯呑みに粉が出にくい

茶葉がしっかりしているので何煎も淹れて楽しむことができますし、柔らかい茶葉を使っているので茶葉を食べることもできます。
黄金色とも言える水色は浅蒸し茶の特徴で、色と香りを楽しめる贅沢なお茶です。

 

どちらが美味しいということではなく、
それぞれのお茶の良さを楽しみたいところです。